Column Detail “立地が良いのに売れない?”姫路城西側エリアで起きた査定ギャップのリアル
2026/05/14

山陽特殊製鋼が2027年4月1日付で親会社の日本製鉄に吸収合併されることが発表されました。
90年以上の歴史を持つ姫路でも名門企業ですが、合併に伴い法人としては解散し、日鉄の社内事業部として再編されるとのことでした。
山陽特殊製鋼といえば、山崎豊子の小説『華麗なる一族』のモデルとなった企業で、1965年に起きた戦後最大の倒産劇「山陽特殊製鋼倒産事件」と粉飾決算が物語の核となったお話でした。
昔から「サントク」と親しまれた企業の名前が消滅することに何となく寂しさを感じました。
さて今回は、実際に査定のご依頼をいただいた案件をもとに、「なぜ立地が良くても査定価格が伸びないのか?」というテーマについてお話ししたいと思います。
ご相談いただいたのは、当社ホームページをご覧になった遠方在住の所有者様。
「できれば買取でお願いしたい」というご希望での査定依頼でした。
対象物件は姫路市柿山伏。世界遺産である姫路城の西側、薬師山の東側に位置する閑静な住宅街です。
かつて武家町として栄えた歴史あるエリアで、今も旧城下町の趣を色濃く残しています。
さらに姫路駅へのアクセスも良好で、不動産としてのポテンシャルは非常に高い立地です。
実際、エリアとしての人気は間違いなく、「立地だけ見れば評価が高い」典型的な地域と言えるでしょう。
しかし、今回の査定はそう単純ではありませんでした。
■中古住宅としての評価が難しい理由
まず建物についてですが、築年数がかなり経過しており、現状のまま中古住宅として販売するのは難しい状態でした。
そのため、査定は「建物付き土地」ではなく、「更地前提の土地」として評価することになります。
ここで重要になるのが、解体費用と再建築条件です。
単純に「土地の坪単価×面積」で価格を出すのではなく、
●解体費用はいくらかかるのか
●再建築は問題なくできるのか
●建て替えた際にどの程度の建物が建つのか
といった要素を総合的に見て査定を行います。
■幅員4m未満の道路とセットバックの問題
今回の物件で大きなポイントとなったのが、前面道路の幅員です。
対象地の前面道路は4m未満。
この場合、建築基準法の規定によりセットバック(道路後退)が必要になります。
これは簡単に言うと、
「道路として扱うために、自分の土地の一部を道路として提供しなければならない」
というものです。
つまり、
●実際に使える敷地面積が減る
●建物の配置やプランに制限がかかる
というデメリットが発生します。
特に今回のように、町屋のような細長い敷地形状の場合、このセットバックの影響は非常に大きくなります。
間口が狭く奥に長い土地は、もともと建築プランの自由度が低いのですが、
さらにセットバックが加わることで、
●駐車場の確保が難しい
●建物の間取りが制限される
●建築コストが上がる
といった問題が出てきます。
結果として、「買いたい人が限定される土地」になってしまうのです。
■買取査定が厳しくなる理由
今回、所有者様は「買取」をご希望されていました。
ここで、よく誤解されがちな「買取」と「仲介での売却」の違いについて触れておきます。
■買取
不動産会社が直接購入するため、
●スピード重視
●確実に売れる
というメリットがありますが、
その分、
●再販時のリスク
●解体費用
●造成費用
●販売期間の不確実性
といったコストを全て見込んだ価格になります。
つまり、市場価格よりも低くなるのが一般的です。
■仲介での売却
一般の買主様に向けて販売するため、
●市場価格に近い、またはそれ以上で売れる可能性がある
一方で、
●売れるまで時間がかかる
●条件交渉が発生する
といった特徴があります。
今回の物件は、
●解体が前提
●セットバックあり
●細長い敷地形状
という条件が重なり、
不動産会社としては再販リスクが高く、
買取査定としてはどうしても厳しい金額にならざるを得ませんでした。
■「立地が良い=高く売れる」とは限らない
所有者様としては、
「姫路城の近くで人気エリアだから高く売れるはず」
というお気持ちをお持ちでした。
これは決して間違いではありません。
ただし、不動産の価格は
立地だけで決まるものではないという点が非常に重要です。
今回のように、
●道路条件(幅員)
●法規制(セットバック)
●敷地形状
●建物の状態
といった要素が重なることで、
価格は大きく変わります。
■今回のご提案と結果
当社としては、
「買取ではなく仲介での売却」をご提案させていただきました。
理由はシンプルで、
時間をかければ、より高い価格で売れる可能性があるためです。
ただ最終的には、当社で売却のお手伝いをさせていただくには至りませんでした。
今回の物件は過去の取引事例も少なく、市場としても判断が難しいケースです。
おそらく他社様でも、近い査定結果になったのではないかと考えています。
■最後に
不動産の査定は、「感覚」ではなく根拠の積み重ねです。
●なぜこの価格になるのか
●どこにリスクがあるのか
●どうすれば価値を最大化できるのか
これらを丁寧にご説明することが、私たちの役割だと考えています。
「思っていた価格と違う」と感じられることもあるかもしれませんが、そこには必ず理由があります。
誠心不動産では、そうした背景も含めて、できる限り分かりやすくご説明することを心がけております。
不動産の売却や査定でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。




